
毎回1冊の本をとりあげ、そこにテーマを設定して読み解いていく、「読むと書く」講座デジタル版です。
初めから通して聴くもよし、興味のある章だけ選んで聴くもよし。
ずっと読んでみたいと思っていた本や、より深く読みたい本を、講師の若松英輔と一緒に読み解いてみませんか?
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神谷美恵子「生きがいについて」
本書は、ひとが生きていくことへの深いいとおしみと、たゆみない思索に支えられた、まさに生きた思想の結晶である。
「生きがい」との向き合い方、生きがいとは「どこに」あるのか、「価値」とは、「使命感」とは。
1996年の初版以来、多くのひとを慰め力づけてきた永遠の名著を、若松と一緒に読み解きます。
(一部みすず書房HPより抜粋)
回 | テーマ | 内容 | |
第1回 | 「生きがい」とは何か | ・神谷美恵子とは、哲学とは ・「生きがい」を書かれた経緯 |
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「生きがい」という言葉は、『生きがいについて』が書かれる前からもありましたが、神谷美恵子によって新生した、といってよいと思います。この回では、神谷がこの本を書くまで、どんな経験をしたかをめぐって考えてみたいと思います。初めてお読みになる方も、ご安心してお聞きいただけます。
第2回 | 生きがいと感情 | ・生きがいを感じていきたい ・大切にしたい「感情」とは |
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「生きがい」という言葉は、日本語にしかない、と神谷美恵子はいいます。また、そこには明確に言語化できない、あいまいさがあるともいいます。「生きがい」を感じていてもそれを言うことができない。あるのを感じてもいてもそれを他者に伝えられない。この回ではそんな「生きがい」との向き合い方をめぐって考えてみます。
第3回 | 生きがいと使命感 | ・自己の存在意義とは ・使命感と生きがいとは |
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「生きがい」と使命感には、密接な関係があります。しかし、神谷は「使命感」は、ときに人間を独善的な世界に招き入れるといいます。
真の使命感に出会う道行きを医師でノーベル平和賞の受賞者でもあるシュヴァイツァーと詩人ミルトンの生涯をめぐって考えていきます。
第4回 | さまざまなる「生きがい」 | ・人間の欲求論から考える ・生きがいを探求したい |
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真に「生きがい」と呼び得るものは、それぞれの人生と深く共振する固有の何かではなくてはならない、と神谷美恵子はいいます。
今回の講座では、生きがいのさまざまな姿や異なる目的が、その発見の契機になることをめぐって考えます。 また、生きがいは、「どこに」あるのか、という根本的な問題へと歩みを進めて行きます。
第5回 | 生きがいをうばうもの | ・生きがいが奪われた時 ・神谷美恵子自身の道程について |
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大切な人を喪うという経験は、「生きがい」が奪われたと感じる、もっとも身近な、そして避けがたい出来事です。ある人を大切に思えば、思うほど、この試練は大きく、また耐えがたいものになっていきます。この回では、神谷美恵子自身、そして、彼女が深く敬愛した藤井武などの言葉に寄り添いながら、見失われた「生きがい」を発見する道程を皆さんと考え直してみたいと思います。
第6回 | 生きがいを見失った者のこころの世界(一) | ・見失った時、こころは? ・価値という言葉の意味とは |
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今回取り上げた個所(著作では第六章にあたります)は本文中、もっとも重要な個所でもあります。ここでの神谷美恵子は、精神科医でありながら同時に哲学者でもあった自身の能力を見事に開花させています。「価値」という一見、平凡な言葉の意味を『夜と霧』の著者であるフランクルや二十世紀を代表する哲学者のひとりホワイトヘッドらと響き合わせながら、思想的かつ、詩的にも深めてきます。
第7回 | 生きがいを見失った者のこころの世界(二) | ・読みの達人 神谷を知る ・日常に生かせる知恵とは |
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今回の章で神谷美恵子は「苦しみ」と「悲しみ」を感じわけ、それぞれのはたらきの意味を探っていきます。そして、苦しみの奥にある悲しみは、それを宿した人をさいなむだけでなく、むしろ、悲しみがあるがゆえに、他者の痛みを共感のうちに感じ得るようになる、と述べています。神谷の「悲しみの哲学」が、どのように深まっていったのかを考えてみたいと思います。
第8回 | 新しい生きがいを求めて | ・今の私にとっての生きがい
・つらぬくもの、から見い出す |
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生きがいの発見に至るまでにもさまざまな発見があります。その一つに、時間のちから、あるいは「時」のちからというべきものがある、と神谷美恵子は言います。過ぎゆく「時間」ではなく、人間を存在の深みへと導く「時」に出会えたとき、私たちは、それまで予想もしていなかった変化に遭遇します。この回でも神谷は作家のパール・バックの言葉を引きますが、そこで神谷が注目するのは、自分から離れることによって、自分が探しているものに出会っていくという「不思議」な出来事だったのです。
第9回 | 精神的な生きがい | ・精神のようにするとは? ・「精神的」神谷が意味するもの |
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今回の講座では「限界状況」あるいは「精神化」といった一見するとむずかしい表現もでてきますが、もっとも重要なのは「生きられた永遠」という視座です。出口が失われたかのような限界状況で、日ごろ感じることのできない心の深みをかいま見ることを「精神化」と呼ぶのですが、それは永遠の世界を生きることだともいえます。
神谷美恵子は「精神化」という抽象的な問題を詩、遺書、思想家の言葉などを引きながら、読者がそれをありありと経験できるように語っています。今回も神谷美恵子が引用している文章にも注目してみてください。
第10回 |
心の世界の変革 | ・日常が神秘に支えられている? ・ささやかな事が意味が大きい |
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この講座の鍵となる言葉は「変革体験」です。それは文字通りの意味で、その人の世界観、価値観を根本からひっくり返すような出来事です。それは、ときにある種の神秘体験のようなになることもありますが、神谷が注目するのは、そうした「現象」ではありません。変革体験が、非日常的経験ではなく、むしろ、日常に新たな意味を再発見する出来事であることです。
変革体験を経た人は、特別な世界をかいま見たのではないのです。日ごろ私たちが接しているこの世界の深みに隠れている意味の宝石というべきものを拾い上げた人たちであり、それがすべての人にも可能であることを教えてくれた人たちなのです。
第11回 |
現世へのもどりかた | ・苦しみを背負っている方こそ ・他者とのつながりを見直す |
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今回で『生きがいについて』の講座は終わりとなります。この章では、避けがたい人生の出来事によって、かつての日常から踏み出さなくてはならなかった人々が、どうやって「現世」にもどるのか、その「もどりかた」をめぐって神谷美恵子の言葉に導かれながら、考えてみたいと思います。ここでの「もどる」とは、単なる復帰ではありません。むしろ、かつてとは異なる人生の質を生き始めることにほかなりません。それは、文字通りの「新生」、すなわち新しい人生の始まりでもあるのです。
河合隼雄「ユング心理学入門」
自我形成における「コンプレックス」の重要な働き、「夢」の認識と働きとは?「自己」とは?
日本で最初のユング心理学に関する本格的入門書で、河合心理学の出発点がわかる本を、わかりやすく丁寧に読み解きます。
(一部岩波書店HPより抜粋)
回 | テーマ | 内容 | |
第1回 | ユング心理学との出会い | ・ユング心理学とは何か ・「河合隼雄」を読んでみたい |
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この回では、河合隼雄とユング心理学との出会いをめぐって考えます。河合にとってユング心理学とは、すでに完成された学説ではなく、創造的に変化し続けるものでした。もともと数学教師だった河合が、心理療法家になっていく道ゆきを見ていきます。
初めての方も、ご安心してお聞きいただけます。
第2回 | コンプレックスの意味論 | ・ユング心理学のコンプレックスとは? ・コンプレックスについて深める |
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今回の主題である「コンプレックス」は、大変よく知られた言葉ですが、じつはその中身をよく理解されないまま用いられている状況に河合は注意を促します。むしろ「コンプレックス」は、自我が形成されていく過程で、大変重要なはたらきを持つ、と河合は語るのです。
第3回 | 個人的無意識と普遍的無意識 | ・ユング心理学の意識の構造とは ・河合が考える「無意識」について |
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意識は、意識と無意識という二層からなり、それぞれの人が異なった意識を持つ、これは誤りではありませんが、十分ではない、とユングは考えました。無意識はさらに多層的で、「普遍的無意識」という他者と広くつながる場があるというのです。この回では意識の構造をめぐって考えます。
第4回 | ユング心理学における「イメージ」と象徴 | ・「イメージ」と「象徴」を動的に ・書くことでしか心像がでてこない? |
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ユング心理学における「イメージ」と「象徴」をめぐって考えてみます。
感覚可能な文字や音とは異なる「イメージ」と「象徴」を、私たちは、生活の至るところで経験します。芸術家たちはそれを物語や詩歌あるいは絵画や音楽という器に移し替え、私たちのもとに送り届けてくれています。それはときに、外的世界の行き詰まりを突破する契機にもなり得るのです。
第5回 | 夢が語りかけるもの | ・ユング心理学の「夢」とは? ・フロイトの「夢」との違いを知る |
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今回の講座では、ユング心理学における「夢」の認識と「夢」のはたらきをめぐって考えました。ユングは、夢を、意味を含んだ無意識からの呼びかけだととらえました。ただ、そこには公式めいた規則もなく、また、安易な接近を拒むものであるというのです。そして、河合は、ユングが「夢」と宗教的経験にも大きな共鳴があることにも着目します。
第6回 | 「たましい」の働きを考える | ・アニマとアニムスとは ・ユング心理学の「たましい」とは |
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今回の講座のテーマは「アニマとアニムス」です。アニマは、男性の内なる女性性、アニムスはその逆です。この二つは、ユングが提唱した「元型」の代表的なものですが、河合は、この二つの元型は「影」などのほかの元型よりもいっそう深いところにあって、捉えにくいと述べています。その捉えがたい場所を河合は、ここで「たましい」と呼んでいます。この本では、「たましい」という言葉はほとんど用いられませんが、後年の河合はひらがなで「たましい」と頻繁に書くようになります。今回の主題は、まさにユング心理学における「心」の奥にある「こころ」すなわち「たましい」なのです。
第7回 |
「自己」と出会う心理学 | ・自己とは個人的ではない? ・ユング、そして私にとって自己とは |
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今回の講座では、ユング心理学における最大の問題の一つである「自己」をめぐって考えます。
私たちは「自己」を個人的存在であると考えがちですが、ユングにとっての「自己」はつねに他者と共にある「自己」、あるいは歴史と共にある「自己」だったのです。
また、「自己」発見の道程で人は、受け容れ難い自分と出会うことになるともユングは語っています。
ユング心理学は、個人的実在だと思われていた「自己」の境域に、大きく変革をもたらしました。
その奥行きを皆さんと考えてみたいと思います。
この章でこの講座は最終回になります。


