12/20【クリスマス講座】キリスト誕生の秘義――『新約聖書』「ルカによる福音書」を中心に
ご案内音声書き起こし


※6分間の書き起こしです。話し言葉、表記の不統一などの不備もございますが、談話そのままの雰囲気といたしまして、お読みいただけましたら幸いです。

 

◎もうすぐ12月。クリスマスにいつもクリスマスらしい講座をやるんですけど、今年はどうですか?

今まで何でやらなかったんだろうと改めて思ったんですけど、クリスマスってイエスが生まれた日ですよね。「キリスト」って、救世主って意味なんですよ。だから救世主であるイエスというのが、イエス・キリストね。イエス・キリストっていうのは、たとえば「バートランド・ラッセル」というような、そういう名前じゃないんですよ。イエスが名前、キリストは尊称。
だから、イエスがキリストとして生まれたのがクリスマスってことなんですけど、そもそも救世主の誕生が、どういう意味を持って、あるいはどういう象徴を持って聖書の中で描かれてるかってことを、僕はあんまり語らないできたんです、今日まで。


◎でもずっと聖書講座みたいやってますよね、新約聖書の。

そうなんです。いい質問ですね。新約聖書、たとえばマルコによる福音書には、イエスの誕生の物語は記載されていません。マタイ福音書には記載されていますけど、とてもシンプルです。今われわれがクリスマスだと思ってるのは、ルカによる福音書。これが一番クリスマスを鮮やかに描き出しています。
ルカ福音書は、なぜか今までやらなかったんですよ。別に特別な意味はないんだけど今までやらなくて、やらなかったからクリスマスのことも語らないできたっていうそれだけのことなんですけど。
でもクリスマスになんでお祝いしたくなるのかとか、どういうことがおめでたいのかとか、たとえば世界中の人がなんでこんなにこの日を大事にしてるのかってことはちょっと考えてみてもいいじゃないですか。

◎まあね。日本だとなんかパーティーの日みたいな……

そうなっちゃってるし、まあ、それが一つの理由。で、二つ目の理由はね、やっぱり自分の中に神が毎年生まれるってことでもある。毎年生まれる。


◎うーん、ちょっとわかんないですね。

だからクリスマスを経れば経るほどほど、われわれの中に神が生まれ直す。よく生まれ直す、確かに生まれ直す。そういう感じですよ。


◎っていうことが、そのルカさんのに書いてあるんですか?

書いてないんだけどクリスマスの解釈として成り立ちうるわけ。シレジウスっていう神秘家がいるんです。この人はプロテスタントの人なんですけど、とても深い詩を書いている人なんです。シレジウスは、クリスマスというのはわたしたちの中で神が生まれることだっていうことを、言うわけですよ。そういう感覚。
自分の中に今年も神が生まれ直してくれた、だから神が新生するって、とっても素晴らしいことじゃないですか。今まで自分が苦しい、悲しい、とてもつらい日々を送ってきているんだけど、神がもう一度生まれ直すってことは、今までの苦しみも今日を境に姿を変えていい、というようにわれわれに深く実感されると、素晴らしいじゃないですか。


◎そこからまた新年みたいな感じなんですね。

そうそう。もちろんキリスト教っていうのは、クリスマスを境に年がかわっていくわけですね。だから本当の意味での新しい年だし、神が新生するってことは、われわれも新生するってことでしょ。本当の意味での誕生っていうのは、本当の意味での新生なんだ、新しく生まれることなんだ、いうようなことを皆さんと考えてみたいなと思ってます。

◎クリスチャンの人じゃないと理解しづらいこととか、出てきます?

まったくないです。
僕の話に、クリスチャンの方もいらしてくださってるのを存じ上げてますし、クリスチャンの方で私の話を聞いてくださってるのを僕は本当にありがたいと思ってます。そうじゃない人たちがいるってことは、僕は片方で知ってるから。

◎そうじゃないっていうのは、批判的っていうことですか。

まあ、そうですね。批判的という言葉が多少柔らかく聞こえるような、そういう待遇の人も世の中にいることを、僕は自分で自覚しているんです。僕は、キリスト教にこだわらなくていいみたいなこと言っちゃうじゃないですか。でもぜんぜんクリスチャンを辞めるつもりなんかないし、キリスト教であるってことを、僕にとっては大事なことだと思っているんだけども、キリスト教だけが真実だ、みたいな、そういう言葉のあり方に対して僕はとても懐疑的なので。でも本音ではそう言いたいって人が世の中に多くいるわけです。
自分たちだけが選ばれているっていう、どこかにそういうところが背後に見え隠れするじゃないですか。でも、自分だけが選ばれるなんてことがあってはならないのが宗教だから。

◎そうね、自分だけが救われるんじゃだめだよね。

ぜんぜんだめだね。むしろ自分の救いっていうものを二番にしてく、三番にしてくっていうのが仏教で言えば菩薩道じゃないですか。
その菩薩的なあり方っていうものも、キリスト教のわれわれは、たとえば仏教に学んでいいし、そういう生き方をどう今日的に表現していったらいいのか、真剣に考えていかなきゃいけないから、もっと仏教に学んでいいと思いますしね。
でも私にとってキリスト教はとても大事な何かなので、そこに秘められてる意味みたいなもの、あるいは秘められている伝統だったり、過去の人たちがどういうふうにそれをとらえ直していたのかってことは、皆さんともう一回考え直してみたいなと思って。

◎クリスマスはパーティーだけだった感じ、教会に行くとかでも何でもなかったけど、でもそういう人たちがクリスマスってもっと素晴らしい意味があるんだな、みたいなことに気づけるような内容でもあるんですね。

「厳か」っていう言葉があるじゃないですか。クリスマスって楽しんでもいいんですけど、その楽しみのパーティーが終わって一人で家に帰るじゃないですか。寝るまでの10分でいいから厳かに過ごしてほしいですね。

◎厳かってなかなかないんですよね。でもちょっといいですね、それは。

ワーッてパーティーやって楽しんでいただくのは全然かまわないんだけども、家に帰って10分間だけ厳かになる。そのときの糸口になるようなお話をできたらな、というふうに思ってます。

◎はい。楽しみにしています。

ありがとうございます。

 



■2022年12月20日(火)19:20-21:00【クリスマス講座】キリスト誕生の秘義――『新約聖書』「ルカによる福音書」を中心に
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