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■特集 片山敏彦とは?


◎片山敏彦ってどんな人? なぜいま、読みたいかというと……



若松:片山敏彦さんは、端的にいうと、高橋巌先生のお師匠さんです。高橋巌先生が、わが師といっている唯一の人で、本当に素晴らしい文学者なんです
大瀧:でもなぜ、あまり知られてないんですか?
若松:これは現代文学の問題だと思います。大事なものが見えなくなるんだよね。 越知保夫だってそうでしょ。越知保夫のすごさは、いまの方々も認めてくださってると思うんだけど、僕が本を復刊したいと思ったときには、だれも顧みませんでした。でも、その人のすごさは変わらない。

3月に、片山敏彦訳『リルケ詩集』を亜紀書房さんから出していただいて、講座でも取り上げるのですが、とても多く手に取っていただいているんです。今度、ラジオにも呼ばれてるんですね。そういう感じで片山さんが再評価されています。ものすごく優れた、美しい日本語の書き手。フランス語とドイツ語ができた人で、ヘッセ、リルケ、ロマン・ロラン……この人の名訳でどれだけ私たちがうるおったか分からない。 そして、なぜ今、みなさんと片山敏彦を読みたいかというと、とても深い神秘家でもあったからなんです。神秘家だから、高橋先生の先生になれる。

◎『泉のこだま』という一冊の魅力

大瀧:本業は翻訳者なんですか?
若松:本業は文学者だけれど、文学者であり翻訳家であり、人間としては神秘家。こんな人は、いないんです。
大瀧:そんな日本人がいたんですね。
若松:いたんですよ。なぜこの人が眠っているのか、みなさんと問い直しながら『泉のこだま』を読みたい。最高の片山敏彦入門です。
大瀧:どういう内容なんですか?
若松:片山さんはこの本のなかで、今名前を出したリルケ、ヘッセをはじめ、自分が大事にした文学者たち、詩人たち、哲学者たちのことを丁寧に論じていています。あるいはこの人は詩人でもあったから、詩とは何か、言葉とは何か、そういう根源的な問題を、とてもやさしく書いてくれています
この本を読んでいただくと、こんな本がなぜ眠ってるんだろう、と感じられると思います。そのことも、みなさんと考えてみたいんです。
大瀧:そして今、この本をなかなか入手できないのでこのたび読むと書く事務局で復刊して作りました。その本もお買い求めいただけます。ぜひご参加ください。


『泉のこだま』復刻版一部をご紹介
はしがき
目次
著者について
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◆◆美と愛と実在を生きた人――片山敏彦『泉のこだま』 (全6回予定)

 現代において文学は、表現の一形式に過ぎないかもしれません。しかし少し前の時代までは、全身を賭して生きる「道」のようなものでした。求道心をもって文学に向き合ったのです。それを体現していたのが片山敏彦でした。彼は高橋巖先生が「わが師」と呼ぶ人物でもあります。今回、テキストにした『泉のこだま』は、片山のさまざまな様式の作品が味わえる「片山敏彦入門」といってよい一冊です。詩的な断章、詩をめぐる随想、秀逸なエマーソン論やヘッセ論、どれを読んでも胸を打ちます。文学、哲学、宗教、芸術が分かれる前の場所に立つ片山敏彦に導かれながら、その世界を感じ直してみたいと思います。(講師:若松英輔)


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NEW 孤独と幸福の詩人――片山敏彦訳『ヘッセ詩集』(全3回予定)

 ヘルマン・ヘッセというと小説家という印象が強いかもしれません。事実、彼は20世紀を代表する小説家でした。しかし、その本性は詩人なのです。小説では書き切ることのできない人生の真実を詩に託したといってもよいかもしれません。詩人・ヘッセは真の幸福と自由と真実の探究者でした。それらに出会うために人はときに「孤独」を愛しまねばならない、とヘッセはいいます。孤独は恐れるべきものではなく、人をその人自身へと導くひとすじの道だというのです。片山敏彦の名訳を味わいながら人生の深みにあるものを皆さんと感じ直してみたいと思います。(講師:若松英輔)


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