第5回のテーマ「夏」「星」で募集をしましたところ、合計67名87篇のご応募を頂きました。
素敵な作品をありがとうございました。
皆様の作品は下記にてご覧頂けます。


《10月25日発表!!》
木蓮賞が決定致しました。
下記をご覧下さいませ。




 詩歌の「題」は、その言葉を用いて書かねばならない、というものではなく、その世界を描き出すことを求めるものになっている。
 今回は「夏」と「星」という二つの題をめぐって87篇の作品が寄せられた。
 一見して分かるように、力作なのだが、多くの作品が「夏」と「星」の言葉を用いることに注力した様子がしばしば見受けられた。
 受賞作となった「晩夏」は、その点において他の作品とは異なる態度でつむがれている。作者は、夏の光景を描いたというよりも、現象の奥にある夏の意味、夏のはたらき、夏のちからを浮かび上がらせている。
 今回は、はじめて四行詩、五行詩という枠を取りはらったが、受賞した作品が短行詩だったことによって、詩は文字数によって可能性が左右されるものではないことを改めて認識させられた。
 今回は、佳作を四篇選んだ。それぞれ稀有なる実感をたしかな言葉で描き出しているのだが、何かが足りない、あるいは何かが多いように感じられた。
 応募された作品全般にいえることだが、足りないのは言葉ではなく、沈黙で、意志ではなく無私である。多いのは、自己を表現しようとする意図である。
 もちろん、言葉も、意志も意図も、詩の表現に欠くことはできない。しかしそれは、私たちのこころに生まれたままでは十分にはたらくことができないのである。
 言葉を深め、意志や意図を鎮め、心にいくばくかの無私を招き入れること、それが詩を生み出すための準備かもしれない。
 書く力量が足りないのではない。詩を書くための静寂の時間がもう少しだけ必要なのかもしれない。
 詩は作るものではなく、世に送り出すものなのだろう。それも自分の手によってではなく、読まれた者の眼と心を通じて行われるとき、詩は作者のおもいをはるかに超えたはたらきをもつようになるのではないだろうか。(若松 英輔)

Q.この企画をどこで知りましたか?
A.「読むと書く」公式ホームページ、メールマガジンおよびTwitter

Q.選者の若松英輔を知ったきっかけは?
A.NHK「100分 de 名著」の『苦海浄土』で拝見しました。

Q.普段から、詩を書かれていますか?
A.たまに日記で書いています。

Q.何年くらい書かれていますか?
A.日記だと高校生の時から(約20年)、他の方々にも見ていただくようになったのは2年前からです。

Q.受賞された作品を書かれたときのことを教えてください。
A.朝の通勤路をうつむきがちに歩いていた時、ふと目に入ったのが木の根元に横たわる蝉の死骸でした。
その傍らにあった草が、なぜか花に見え、木が墓碑のように思えました。
この詩は、あまり自分で“書いた”という気がしません。むしろ、目に焼き付いた光景と湧き出る思いを、 たまらずスケッチしていたという感じで生まれました。

Q.受賞されたお気持ち、感想をご自由にお書きください。
A.これまで賞と無縁な人生を送ってきましたので、にわかには信じがたかったのですが、若松先生が以前、 「他者の評価には過度に一喜一憂しなくともよい」とおっしゃっていたのを思い出し、謙虚に受け止めたいと思います。
今は静かな喜びが胸の内に広がっています。

Q.ご自身にとって大切な1冊をあげるとしたら?
A.ヘッセの作品は全て好きですが、あえて挙げるとしたら『デミアン』でしょうか。
善悪の狭間で葛藤する姿を描きながら、最後に外界と調和する人の精神の深さを知らせてくれた最初の本でした。



木蓮賞受賞、おめでとうございます。
田仲典子様には、若松直筆の詩をお送りさせて頂きます。
〈参加賞〉
なお、ご参加頂きました皆様全員に、参加賞として、「若松の言葉入:読むと書く特製ファイル」をお送りさせて頂きます。










〈過去に行われた発表会〉